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1. ゾンビ注意報
最悪最悪最悪!最悪なのはしょっぱなからだけど、グロまでトッピングしなくていいよ、誕生日だからって!
ゾンビ、ゾンビ、ゾンビ…見渡す限りゾンビだらけ!
幸い私はチャリだから、足の遅いゾンビには捕まらない。
朝っぱらから誰も彼も浮かれた浴衣姿で……。昨晩の祭りで大規模感染したんだろうね。せっかくポツンと限界集落だったのに、どこから入ったのか。まぁ、脳味噌停止の腐れた村だから、時間の問題だったとは思うけど。
ゾンビ発生の第一報が報じられたのは、山が冬眠から目覚め、土が蠢く啓蟄の頃だった。
東京・大阪・北海道で同時にクラスターが発生したらしい。正確には、先進国の大都市で同時多発的にゾンビが出たとかで、生物兵器によるテロか、新種のウィルスかと騒がれてて。とりま噛まれたり引っ掻かれたりしなければ大丈夫そうって話だったけど……。
途中からニュースが入らなくなっちゃったんだよね。叔母さんが言論統制だなんだと喚いてたけど。要は外のことはなぁんも分からないってワケ。
山に囲まれたこの村は、風力発電だのメガソーラーだの力入れてたし、昔ながらの農家さんも残ってたから、自給自足ライフでいけるっしょってノリだったんだけどね。
見通しが甘かったワケだ。
まさか私が裏山の秘密基地でふて寝してる間にゾンビ村に変わってるとは…。
さっきまでグゥグゥうるさかった腹の虫は、どこへやら。
生ゴミの袋に溜まった汚水を村中にぶちまけたような凄まじい悪臭に、私はエア嘔吐を繰り返す。
涙を拭って前を向くと先方に、ベッタリとくっつく二体のゾンビの後ろ姿を見つけた。
見慣れたツーブロックの雄と、嘲笑うような向日葵の浴衣の雌……。
ーー紗代と光輝だ。
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