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まさか自分がこんなことをするとは‥‥
数日後。
シフト休みを利用し、店から数駅先にある
彼の自宅マンションを訪れていた。
バイトで遅くなるのかも知れない、
帰って来ても誰かと一緒かも知れない。
そんな不安を抱きながら、ひたすら入口が
見える位置、柱の陰に潜んだ。
日が暮れ、夜が来た。
(今夜は満月か‥‥)
月を見上げ、一瞬だけ視線を外した時。
「川瀬さん?」
待ち人の驚きに満ちた声が響いた。
「こんばんは」
「な、何故。ここに」
「ごめんなさい、職権濫用して。岸野くんに
話したいことがあって」
「とりあえず、入ってください」
彼に続き、マンションの中に入った。
白が基調のワンルーム、
家具は本棚とベッドのみのシンプルな部屋。
ベッドの横に背中をつけ、
足を伸ばした姿勢で彼と並んで座った。
「話って何ですか」
「うん。岸野くんに告白されてから、深く
考えたんだ。キミの言葉を信じたいから
正直に答えて欲しいんだけど‥‥特に、
フィジカルな話を」
「フィジカル、ですか」
「今までどれくらいの人に抱かれてきたか、
とか、今そういう対象はどれくらいいるか、
とか、どれくらいの頻度でしてるのか、
とか」
「ああ‥‥ずいぶんストレートですね」
「キミが心配なんだ。店員とお客様として
出逢ったし、岸野くんが店に来なければ
終わる関係なんだけど。いつかキミが
何か事件に巻き込まれたりしたら‥‥」
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