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「川瀬さん、どうかしました?」
ハッと我に返ると、心配そうな表情で
宮嶋が俺の顔を覗き込んでいた。
今は開店に向けての準備中。
氷が足りるか確認するために製氷機の扉を
開け、そのままの姿勢でぼんやりして
しまったようだ。
「ああ、ごめん。大丈夫、何でもない」
あれから彼とは頻繁に連絡を取り合い、
お互いの家を行き来していた。
先月の満月の晩、彼の望みのままに
朝まで抱き合った。
それ以来、会う度にどちらかの家で
朝を迎えている。
まるでもう半同棲のような状況、
2人では買い物に行かないようにしているが
いつかは誰かに目撃されてしまうだろう。
今夜は満月。
彼の衝動が大きく弾ける夜だ。
どういう風に、彼を抱き潰そうか。
どんな風に触れたら、
悦びの余り、咽び泣いてくれるのか。
朝からそんなことばかり考えていた。
彼と結ばれる夜は、
お互いが満足できるものにしたい。
「川瀬さん、立て看板置いてきますね」
溌剌とした宮嶋の声を聞きつつ、
吉川と笑顔の最終チェック。
今夜も無事に開店。
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