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ベッドに撒かれた数枚の千円札を拾い、
僕は静かに涙を流した。
もっと優しくて、
僕だけをまっすぐ見つめてくれる人に
出逢いたいのに。
自分の性欲に負けて、
また後悔する羽目に陥っている。
ああ‥‥外見なんてどうでもいいから、
とことん甘えさせてくれて、
ホッとできる人、いないかな‥‥
身支度を整え、トートバッグを肩にかけると
ラブホを後にした。
「だからさ、岸野。自分を安売りするなって」
「じっくり見定めて。岸野を大切にしてくれる
人は必ずいるからさ」
大学の先輩の秋津さんと秋津さんの彼氏の
宮嶋さんは、そう優しく僕を諭してくるが、
好きでこんなことをしている訳じゃない。
僅かに眉を顰め、不快な気持ちを表したが
彼らには伝わらずその後も助言という名の
お節介が展開される。
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