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「川瀬さん、ちょっとお話したいことが」
出勤して早々に後輩アルバイトの大学生、
宮嶋恭介に呼ばれ、
店の近くの事務所で話を聞くことになった。
宮嶋は理性的でとても真面目、
3歳年下だがしっかり者の得難い存在だ。
既に就活は終わっていると聞いているが、
シフトのことだろうか。
宮嶋に椅子を勧め、2人で座った。
「川瀬さんにこんなことを相談するのは
かなり抵抗がありますが」
「何でも話して。内容によっては他言しない」
「ありがとうございます‥‥実は俺の彼氏の
秋津昌美が、後輩をここに連れて来たいと
言ってまして」
「別にいいよ?後輩くんもゲイでしょ、
問題ないよ」
「はい。確かに秋津の後輩はゲイですが、
ややマナーが悪い子なんです‥‥」
「何、酒飲んで暴れるような子なの」
「いえ、俺も会ったことはあるので
それはないんですが、その、男漁りが」
「なるほど‥‥ここは出逢いの場ではあるけど
見境のない誘い方をして静かにしていたい
お客様に迷惑をかけるかも知れないって?」
「そうなんです、うちの雰囲気に合わない
可能性があるので秋津に即答できなくて」
「お客様はお客様だから、基本的には
こちらは拒めない。実際にお会いしてみて
よっぽどひどかったらお帰りいただく。
俺が見極めるから、宮嶋は安心して?
ただ、俺のシフト休みに重なったら困るから
事前にこの日に来ますと言って欲しいけど」
「ありがとうございます。それはもちろん」
宮嶋は心からホッとした様子を見せ、
大きく何度も頷いた。
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