後編

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次の瞬間。 派手に開かれる玄関ドアの音とともに。 「葵っ!」 血相を変えた川瀬が警察官を連れて現れた。 「川瀬くん♡」 男が川瀬に気を取られたその隙に、 僕は男の股間を蹴飛ばした。 「い‥、ったあ‥‥!」 悶絶し、その場に転がる男を擦り抜け、 僕は川瀬に抱きついた。 警察官にしょっ引かれる男の後ろ姿を 川瀬と見送り、息を吐いた。 「アレが由貴のファンなの、すごい人だ‥‥」 「本当にごめん‥‥葵にまで迷惑かけて」 「もう大丈夫。あのさ、今日佐橋さんに」 「うん、俺も佐橋から話を聞いたよ。 葵、俺と別れますって言ったんだって?」 「だってそう言うしかなくて」 「実は宮嶋から佐橋に直談判があってさ。 俺をこの店から外すなら、今いる従業員は 全員辞めますけど大丈夫ですか?ってね」 「えっ」 「うちは俺を含めて、従業員は5人だからね。 人柄重視で選んできてギリギリのやり繰り だから、その人たちが全員辞めたらうちは 立ち行かなくなる。さすがの佐橋さんも、 今回は降参」 「‥‥じゃあ」 「うん。俺と葵が別れられる訳ないじゃん」 川瀬に抱きしめられ、心から安堵した。 「宮嶋さんを始めとしたスタッフに感謝だね」
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