前編

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「いらっしゃいませ」 「川瀬さん、こんばんは」 宮嶋の彼氏の秋津が微笑んだ。 「ほら、岸野。ご挨拶しろよ」 秋津の背中に隠れて、姿が見えない。 俺は一歩近づき、満面の笑みで声をかけた。 「初めまして。お越しいただきまして、 ありがとうございます」 「あ、」 秋津の背中越し、力強く目が合った。 つぶらな瞳、サラサラでまっすぐな黒髪。 俺と身長が変わらない秋津の背に 隠れてしまっていたのは、 小柄で華奢な背格好だったからだ。 そして儚さと優雅さを纏うオーラ。 小さく肉厚な唇と目の下の泣きぼくろが 色っぽく映った。 (ヤバい‥‥かわいすぎる) これは想定外だ。 彼に対し強烈な一目惚れを自覚しながら、 男漁りが激しい大学生とはまるで思えない ギャップの差に俺は戸惑った。
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