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「岸野、帰ろう。今夜はうちに泊まるんだろ」
宮嶋が席から動かない彼を優しく諭す。
「川瀬さん、困ってるじゃん。いいのか?
大好きな川瀬さんに嫌われたくないよな」
秋津も言葉を続ける。
「岸野が帰らないと、店が閉められない。
迷惑かけたらダメだよ」
「川瀬さんに嫌われたくない‥‥でも、」
泣きそうな顔になった彼が、
再び俺に眼差しを向けてくる。
「川瀬さん‥‥僕のこと、避けてましたよね」
「いえ?そんなことは」
図星だったがそう言わざるを得なかった。
「だって、全然こっちに来てくれないし!
ずっと見てたのに!寂しかったです!!」
「それは」
だって、規定があるし。
困り果てた時、
秋津が言葉を差し込んできた。
「川瀬さんがお仕事で忙しかったのは
わかってるよな?宮嶋にも迷惑かけてさ。
お前にばかり構っていられないんだよ」
「岸野、お前は何がしたいんだ。今夜は
俺たちがいたから声をかけられなかった
けど、いつもは好みのタイプをお持ち帰り
できるからイライラしてるのか」
「違う」
彼が大きく首を振る。
「僕、川瀬さんがいい。他の人はいらない。
連絡先も全部消すし、二度とマッチングは
利用しない。だから川瀬さん」
そこで言葉を切り、彼が唇を噛み締めた。
「僕と‥‥付き合ってください」
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