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「先輩、落ち着いて」
はっ、と詰めていた息を吐き出した。苦しいのは呼吸のできない2秒間のせいじゃなかった。囁くように私を呼んだ後輩は、理知的な雰囲気を崩すことなく、なんの罪悪感もなさそうな顔つきで私を見ていた。逃れようとしても顔を背けることは許されなかった。頬に添えられた手から逃げることができなかった。「やめてよ」なんてたった四文字が口にできなかった。
「先輩が僕と何をしても、道理も倫理も咎めませんよ?」
ぐ、と腰が抱き寄せられる。後輩はやっぱりいつもどおりの平然とした顔つきで――でも顔を近づけた瞬間に、悪魔のように不気味に口角を吊り上げた。
「大丈夫、浮気じゃないから」
後頭部をホールドした手に促されるがまま、もう一度唇は重なった。
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