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「……そうだよね。紘は酔ったら私のところに来るし」
「なんでそういう嫌味な言い方すんの?」
「別にそんな言い方してないじゃん。紘は松隆が男だからあんまり酔うなって言ってるんでしょ。襲われちゃいけないからって。確かに紘は私のところに戻って来ようとするもんねって──」
「いまの生葉の言い方、そんなのじゃなかったじゃん。俺だって──飲み過ぎて迷惑かけたことあるのは悪かったって思ってるけど、それとこれとは別じゃん」
「だからそんな話してないでしょ」
「生葉が言い始めたのに」
「だから私はそんなつもりじゃなかったって……」
「とにかく、あんまり松隆と仲良くするのやめとけば。ああいう人を馬鹿にしたやつ、嫌いなんだよ」
はぁ、と紘はそこで溜息を吐いた。
紘が松隆を好きじゃない──どころか嫌いなことは知っている。それは、私と松隆が仲良くなるずっと前から、松隆がサークルに入ってきてすぐの頃からだ。当時は「後輩にそんなこと言っちゃだめだよ」で終わっていたのに、今はどこか腹立たしいような気持ちになる。
「……後輩になんでそんなこと言えるの?」
でも、言える言葉は今でも変わらない。私と紘にとって、松隆はただの後輩だ。紘は「いや、だって事実じゃん」と苦々し気に答える。
「事実じゃないじゃん。松隆はそんな子じゃない」
「……マジで、イケメンは生きやすくていいよな」
「……なにそれ、松隆がイケメンだから私が贔屓してるって言いたいわけ」
「だってそうだろ。つか、別に松隆の話はいいよ。見られないように気を付けたらって言いたいだけだし」
「……見られないようにって、なにを」
「俺が津川に口止めしてやったって言ってるの」
……なんでそこで、その人が出てくる。どうして、沙那が出てくる。
ダブルスタンダードに加えて、弟みたいに可愛がっている後輩を悪く言われて、苛立ちは一層増していた。そんなところに沙那の名前まで出されて、もう、爆発寸前まで負の感情が積もっていた。
「……それ、どういう意味」
「だから、俺が一緒にいなかったら、津川はお前と松隆のことをSNSで拡散してたぞって言いたいの」
それでも、やっぱり何も言えなかった。それどころか、予想外の台詞に惑ってしまって怒りのやり場を見失った。
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