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「あたしがお前の晩酌に何度付き合ってやったと思ってんねん。お前みたいな酒好きにとって酒飲めん彼女なんてヴァーチャル彼女と大差ないからな。絶対苦労するからな! 覚えてろよ!」
「そのうち酒飲める彼女のありがたみが分かって戻ってくるんじゃね」
「フラれた男に追いすがるほど女廃ってないわ」
「丸太先輩、かっこよすぎでしょ」
男の後輩・馬口をもってしてそう言わしめ、丸太先輩は「ふんっ」と更にビールを煽った。
「なんか面白い話聞きたいわ。馬口なんか話して」
「えー……いやそんなこと急に言われても……」
「そういえば馬口、告った相手が先輩の元カノだったって話、本当?」と早速松隆。
「なんでそれをバラすんだよ!」
白羽の矢を立てられた馬口が顔を真っ赤にして狼狽する。向かい側の烏間先輩は「あー、俺もその話聞いた」と頷いた。
「インカレのほうにいた女子で、2回生だっけ? 1年半もあれば誰かの彼女にはなってそうだけどな」
「だからって先輩の元カノとは思わないじゃないですか!」
「そもそも先輩とその元カノはどうやって知り合ったの」
「……先輩はその彼女と別れて気まずくてサークルやめたらしいです」
「それはお前の調査不足だわ」
笑い飛ばされた馬口は「そういえば、最近気まずくてサークルやめたといえば今出さんがいますよねえ!」とわざとらしく声を張り上げた。当人でもないのに、なぜか私がビクリと肩を震わせてしまった。そっと松隆を盗み見ると、平然とリンゴジュースを飲みながら「いない人間のことをあれこれ言うのはどうかと思うけど」。
「お前! 俺を売ったくせに!」
「なあ、松隆ってなんで彼女作らんの?」
「なんでと言われても」
不思議そうな丸太先輩に、松隆は眉を吊り上げる。茉莉も激しく頷いた。
「本当に、松隆くんはイケメンですよね。学祭の軍服姿もめっちゃくちゃかっこよかったですからね!」
学祭の写真は、サークルのグループラインに上がっていた。
「あー、あの写真な。あれやばかったわ、1枚いくらで売れるんやろおもた」
「ちょっと、人の顔を売らないでくださいよ」
私は、怖くて、学祭の写真を見ることができていない。
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