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「僕は、……ずっと、省吾と一緒になれるものだと思ってた……だから、結果が、全然受け入れられなくて……っ……」
検査を受けるまでは、自分がSubになるのだと、省吾のものにしてもらえるのだと、期待に満ちていたのに。
嗚咽を漏らす一希の耳に「そっか」と省吾の呟きが届いた。どこか意志を固めたような、そんな響きだった。
一希は省吾の表情を窺うように顔を上げる。
「先生たちが言ってたろ。俺はDomに、一希はSubになるだろうから、二人でずっと一緒にいられるって。……でもさ、そうじゃなくてもいられるんじゃねぇかなって、実は思ってんだけど」
「……どういう、こと?」
「高一の時、Subって結果受けて俺もショックでさ、どうしていいかわかんなくてよ。だからめちゃくちゃ悩んだ。一希のDom性を満たしてやれないだろうし、俺も満たされないだろうし。別の奴見つけるしかないかって」
でもな、と省吾はなぜかスッキリしたような笑顔を一希に向けた。
「そんなのどうでも良くなったわ。第二性(ダイナミクス)は二の次! 一希がずっと俺と一緒でいいって思ってくれてんなら、もう迷うことなんてねぇし、――だからさ、」
卒業したら結婚しねぇ?
省吾は膝の上で組まれた一希の手に手を重ね、一希の瞳を射抜くような眼差しでそう告げた。
「俺は一希さえいてくれたらそれでいい」
「……っ、省吾……」
その揺るぎない言葉は一希の心に絡まっていた糸をじわじわと解していくようだった。どんな時も一希の心を動かすのは省吾ただ一人なのだ。気持ちの高揚と共にしゃくりあげるような嗚咽が漏れてしまいそうで、一希は堪らず唇を噛みしめる。
「おまえは? そうじゃねぇの?」
「そんなの決まってる……っ! 僕だって、省吾しかいらないっ」
「ふはっ、熱烈じゃん、一希」
「っ、う、うるさい!」
省吾のからかい口調に一希は真っ赤になり、小突こうと手を伸ばす。しかし省吾はそれを軽々と捕まえて、まるで手押し相撲のように押したり引いたりを繰り返した。次第に二人の口から笑い声がこぼれ始める。
「もう、省吾!」
「あはは、じゃあ、これで今から恋人同士な」
にっと省吾が口端を上げると、一希は涙をいっぱい溜めた目を輝かせて頷いた。
検査結果の紙を破ってゴミ箱に放り入れた二人は、意気揚々と校門をくぐる。その手はしっかりと繋がれていた。
「あああー、二年間無駄にしたなぁ」
「どうして?」
「高一の時、検査結果がでたら、一希に告白しようと思ってた。予想と違ってうやむやになっちまったけど」
「……本当に?」
「嘘言うわけないだろ」
「そ、そういうわけじゃなくて、僕も……同じこと思ってたから……」
「……マジで?」
「うん、まじで……」
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