これが二人の歩む道

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 省吾がペンを運ぶのをじっと見つめ、それが終わると一希は深呼吸して、膝の上に隠していたリボンのかかった平たい箱をテーブルに置いた。 「これは……?」 「省吾、受け取ってくれる? 首輪(カラー)なんだけど」  首輪(カラー)は所有の証でも有り、Domの支配欲とSubの従属欲を満たすもの。一希には従わせるという意識が薄く、省吾は首輪(カラー)を貰えるのは当分先のことだと思っていた。  それに省吾自身も所有されるというイメージがなく、まだなくてもいいかと軽い考えでいたのだが、こうしてプレゼントされるとなんとも言えない幸福感が心を占めた。この喜びはSub特有のもの。省吾は本当にSubなんだなと改めて自分を認識することになった。  省吾は箱を受け取り、リボンをスルリと解く。蓋を開けると細めの黒のチョーカーが入っていた。 「これね、羊皮なんだ。柔らかくて肌に馴染むって聞いて。気に入ってくれるといいけど」  毎日着けるものだからと、色々な意見を参考にして一希があれこれ悩みつつ選んだものだった。 「……ありがとな。なんか変な感覚。すげぇ嬉しいのな、こういうの」 「う、嬉しい? 本当?」  目を輝かせ、照れたように頬を染めるいじらしい姿に、省吾は溢れる思いを我慢するようにくっと喉を詰めた。 「嘘つく必要ないだろ。な、一希、着けてくんねぇの?」 「えっいいの?」 「おまえにつけて欲しいの」  うんっ、と一希は勢いよく立ち上がり、省吾の背後まで駆けていった。チョーカーを受け取り、そっと首に添わせる。金具を留めようとするが、指が震え、なかなかうまくはまらない。 「くすぐったいって、なにしてんの」 「だ、だって、手が震えて……」 「……ホントおまえって」 「だって嬉しいから! 断られたらどうしようって思ってたし――あっ、入った! よかった……ぅわっ」  うまくつけられてホッとしたのも束の間、一希は急に立ち上がった省吾に横抱きされ、すぐ隣にある寝室のベッドの上にぽいと放り投げられた。省吾はそのまま一希の上に被さる。 「省吾⁉」 「もう無理。可愛すぎて我慢できねぇわ」 「え、まっ……んっ」  省吾は押し返そうとする一希の両手首を掴んでシーツに押し付け、そのまま口を塞ぐ。開いていた唇から難なく口内に侵入を果たした舌は逃げようとする一希のものを追いかけて絡め取る。じゅっと音を立てて吸われれば、頭の中が痺れ、一希の体がビクビクと震えた。 「ぁ……んっ……ン、ふ」  届けを出してからゆっくりしようという話だったのに、それも忘れてしまいそうになる。  その間にも一希のシャツのボタンは一つ一つ外されていき、省吾の手がなめらかな肌の上を滑った。 「はっ……ぁ、だめっ、婚姻届まだ出してないよ!」 「二十四時間受け付けてるから、夜にでも行けばいいって」 「もうっ省吾、『ステイ(待って)』!」
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