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一希と省吾は孤児で幼馴染だった。
三歳の時、事故で両親をなくし、程なくして預けられることになった施設で二人は出会った。
当時、省吾は一希にいつもちょっかいをかける悪ガキで、一方、一希は省吾にいじられてばかりのおとなしい子だった。
しかし、二人でいることが当然というように側から離れず、ご飯の時は必ず隣で、お昼寝の時間には寄り添って寝ていた。それを見て、大人たちは省吾がDomで一希がSubになると予想し、相性のいい関係を築けるだろうと考えていた。
同じつらい経験をした二人がお互いを大切にし合える関係が続くのなら一番いい。そんな大人たちの思いを汲むかのように、省吾はいつも皆を引っ張って行くような心身共に逞しい存在になり、一希は庇護欲を掻き立てられるような心根の優しい少年に成長していった。
第二性の検査を受けるのは二次性徴が始まってからであり、通常高校入学直前に一斉に一次検査が行われる。判定が出なければ、その後一年ごとに検査が行われ、十八の誕生日をもって第二性が確定したものとみなされる。
「やっぱSubだったわ」
「……そっか」
「おまえは?」
「うん……変わらず、Domだったよ」
誕生日が隣同士の二人は、誕生月の末日に一緒に追加検査を受けた。その結果が今日、養護教諭より渡されたのだ。人生四度目の検査。四度目の正直だった。
二人して結果がプリントされた紙を握りしめ、校庭横のベンチに腰掛けていた。その表情はどう見ても明るいとは言い難い。
高校三年半ばを過ぎ、十八の誕生日を迎えた二人のバース性は大人たちが予想したものとは全く正反対の結果となった。
省吾がSubで、一希がDomだったのだ。
どちらのバース性だから有利、というものはなく進路に制限があるわけではない。パートナーとさえうまくいっていれば、DomもSubも傾向に沿わない職に就くことができる。
ならばなぜ二人が気落ちしているかというと、第二性の性質と自分の性格との不一致について思い悩んでいるからだった。一度出た検査結果が覆る可能性はほぼ皆無。だが、二人は一縷の望みをかけて検査を受け続けていたのだ。
第二性の基本的な知識は少人数を集めて、学内で実施されるのだが、まずその説明に二人が愕然としたのは言うまでもない。省吾は人に命令されて喜ぶような人間ではなかったし、一希も人に命令して跪かせたいなどと思ったことがなかった。
通常、第二性保持者はパートナーとのプレイを通して本能を満たすことで、自律神経を整え、心身共に健康を保つ。
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