Prologue.

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Prologue.

 森林を裂くように伸びる朽ちた長い道。  はるか昔にはこの道が都市と都市、人と人とを結ぶ重要な動脈となって、人間社会に血液とも言うべき何かを流し続けていたのだろうか?  人間達の栄枯盛衰(えいこせいすい)を可視化したようなこの道で、俺は対峙する女性型アンドロイドに照準を合わせながら、どうやってこの場を切り抜けるかを考えていた。  いくつかの案は即座に示された。俺一人だけならそう難しい問題ではない。  しかし、“車内にいるエリカの無事を確保しながら”という条件が付加されただけで、全ての案は破綻する。  俺のAI(自我)は導き出された数々の妙案全てを拒絶し、条件付きでの再検討を思考回路に要求した。 「そろそろ同行してもらえますか?」  エデンと名乗る女性型アンドロイドが言った。 「お断りだ」  俺が冷たく言い放つと、エデンは即座に腰元から銃を取り出し、表情1つ変えることなくトリガーを引いた。  対アンドロイド用のピアシングガンは獰猛な咆哮を上げ、放たれた貫通弾が俺の右肩に襲いかかる。  俺は上体を軽く動かして弾丸を避けた。そして、エデンのジェネレーター(動力源)が存在する胸に狙いを定めると、返礼代わりの弾丸を1発放った。  それを見透かしていたかのようにエデンが射線上から体を引くと、目標を失った弾丸は緑の茂みへと消えていった。  エデンはゆっくりと元の姿勢に戻ると、再び俺の顔へと視線を戻した。 「相変わらず、容赦ないですね――」  俺はその言葉を聞き終わることなくエデンに向かって走り出した。
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