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第14話 警告
玲奈の言葉に、そのまま1人にしておくわけにもいかず、古賀は玲奈の家にあがった。話だけ聞いて、とにかく怜奈を落ち着かせすぐに立ち去るつもりでいた。
怜奈がソファに座るのに手を貸し、自分はローテーブルを挟んだ向かい側に座ろうとした時、怜奈が腕をつかんだ。そのため古賀は怜奈の隣に座ることになってしまった。
古賀の顔を真っ直ぐに見つめながら玲奈が言った。
「わたし、歩道橋で誰かに突き落とされました」
「え?」
「間違いありません。背中に押された時の手の感触が残っているんです」
「だったらすぐ警察に……」
怜奈が首を振る。
「今日は、どうしてあそこに?」
「それは……」
「ごめん、個人的なことだったね。もし、突き飛ばされたのが本当だったとして、不特定多数を狙った愉快犯かもしれないし、川島さんを狙ったと断定する理由は……」
「同じ大学の、よく知ってる人が殺されました。その友達も」
「だからって、川島さんまで殺されるっていうのは少し飛躍しすぎているよ」
「同じ大学の2人が殺されて、2人を知っている人間が階段で突き落とされるとか、そんな偶然ってあるんでしょうか?」
(あの場所に、沙耶という女がいたのは偶然なのだろうか?)
古賀の脳裏にあの時、一瞬目があった沙耶の、自分を見た時の驚いた顔が浮かんだ。
「あの時、歩道橋でわたしのこと『怜奈』って呼びましたよね?」
怜奈がその大きな瞳を潤ませながら古賀を見つめる。
「そうだったかな? ごめん、記憶にない」
「わたし、古賀さんが好きです」
「え、あ、ありがとう。20も年が離れたオジサンにをあんまりからかうもんじゃないよ。本気にしたらどうするの」
「本気にしてください。年とかそういうの関係ないです」
そう言うと、怜奈は古賀に抱きついた。
ふわりと花のような香りがする。
「ずっと前から好きだったんです」
怜奈は古賀に抱きついたまま、上目遣いに見つめてきた。
どこかで警告音が鳴っている。
けれども古賀はそれを無視して、玲奈を見つめたまま、その背中に手をまわした。
「好き……」
怜奈が最後まで言い終わる前に唇を重ねると、そのままソファに押し倒した。
(こんなにも誰かを愛おしいと思うのは、初めてかもしれない)
堰が崩壊する……
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