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第20話 目的
沙耶と名乗っていたこの女が、明日香だったとして、その目的がわからない。
「怜奈を歩道橋から突き飛ばしたのは、怜奈を……殺すつもりだったのか?」
明日香は少し目を細めるようにして言った。
「いつの間に名前を呼び捨てする仲になったんですか?」
「答えろ」
「怜奈はあの日、飯坂と会う約束をしていました」
明日香の答えは腑に落ちるものだった。
玲奈は隠していたけれど、飯坂と会うつもりでいたのだとわかると、あの場所にいたことが納得できる。
「あいつは、怜奈に発注伝票の書き直しをさせたように見せて、元の伝票もわざと発注に回してた。それをミスだと言って、店長に責任をとって辞めてもらうって、怜奈を脅したのよ」
(自分のために怜奈は飯坂に会おうとしたのか)
古賀は、既に亡くなった飯坂に怒りを感じずにはいられなかった。
「飯坂は自分の言うことを聞けばなんとかしてやるって、あの日ホテルのラウンジに呼び出した。あーいうやつは何度でも同じことをする」
「それと怜奈を突き落としたことと何の関係が……」
「病院に運ばれれば何があっても疑われない」
(怜奈のアリバイ?)
「あいつは、ちょっと気のあるフリをしたらのこのこついてきて、簡単だった。もういいでしょ?」
(飯坂は自殺ではない?)
「怜奈のことは、一歩間違えれば……」
「上からは落としていない」
「まさか、あの写真の大学生も?」
「ギブアンドテイクです、古賀さん。今度はわたしの質問に答えてください。怜奈を愛していますか?」
(質問の意図はなんなんだ?)
「……大切に思っているよ。」
明日香は少し考えてから答えた。
「片桐直哉は怜奈の元カレ。片桐直哉と野崎信也は、あいつらは……付き合った相手との性行為を動画にとって共有していた。そしてそれを売ろうとしていた」
(怜奈と関わった男たちを殺している?)
「古賀さん、怜奈と寝ましたか?」
(その答えを言ったら自分も殺されるのだろうか? )
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