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第2話 自然に
駅に隣接したショッピングセンターの中に、怜奈がアルバイトをする本屋はあった。あけぼの書店駅南口店は、通勤ラッシュで駅が混み合う時間を除くと、接客するほど客が来ないので、本の整理や掃除がアルバイトの主な仕事になってしまっている。
怜奈がいつものように順番に棚をチェックしていると、料理本コーナーで真剣に本を選んでいる女性がいた。
スタッフのエプロンに目をとめたらしく、女性が声をかけてきた。
「すみません、初心者でも作れる簡単な本を探していて……」
女性は怜奈の顔を見て、
「あ」
と言った。
「あ」
怜奈もつられて言ってしまう。
「また会いましたね」
女性が微笑む。自然で、くったくのない笑顔。
(やっぱりきれいな女)
本を持つ指先には、アイスクリームショップで初めて会った時とはまた別のデザインのネイルが施されていた。頭の先からつま先まで、どこにも手を抜いたところがない装い。怜奈が知っている女の人の中で一番きれいな女性だった。
「あの後、また別の日にお店に行ったんです。チョコにナッツの入ったアイスを食べたんですけど美味しくて、今度はダブルに挑戦するつもり」
まるでこれまでアイスを食べたことがなかったかのように、嬉しそうな表情で話す女性は、小さな子供のようだった。
「ごめんなさい、お仕事中でしたね。私ってばこんな話をして引き留めてしまっって」
「いえ、大丈夫ですよ」
玲奈は少し周りを見渡してから、誰もいないことを確認すると小声で言った。
「暇してるんです」
女性は微笑んだ。
「最近こっちの方に引っ越してきたんです。それで、今までお料理とかしたことなかったんだけど、これを機にがんばってみようかと思って。おすすめの本はありますか?」
それがきっかけで、本屋で見かけると怜奈の方からも話しかけるようになった。
立花沙耶と名乗ったその女性は、少し年上くらいかと思っていたら、33歳だと言うので、21歳の自分とたいしてかわらないと思っていた怜奈はとても驚いた。
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