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プロローグ
朝、鏡を見たらこの世で一番憎悪する顔がこちらを見ていた。
思わず化粧水の入った瓶を鏡にたたきつけたら、粉々になった鏡のカケラの数だけ、憎い相手の顔が私を見て嘲笑った。
あの女は、死んでもなお、私を苦しめ続ける……
少し顔立ちが似ていた子に、100万円で身分証を借りて整形手術をした。
どんな顔でも良かった。
でも具体的にどうしたいのかを説明する必要にせまられ、待合室にあった雑誌の表紙になっていた、ナントカという女優の顔を希望した。
手術で腫れ上がった顔がようやく落ち着いて、恐る恐る鏡を見たら、ナントカという女優の顔とは似ても似つかなかったけれど、ようやく自分の顔を直視できるようになれた。
でも、誰のものでもない自分を手に入れたら、少しはこの世界もマシになるかもしれないなんて期待は無駄だった。
ただ惰性で生きている毎日。
もういいかな、と思っていた時、見つけた。
もう少しだけ生きる意味を。
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