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椿はそっけなくしていたが、美耶子は、ふぅん、と呟いて、ちらりとその横顔を見た。
電車は二人が降りる駅に着いて、停車する。雲一つない青空が広がるホームの端を歩きながら美耶子は、椿くんはなんのアイス食べるの?と訊いた。椿は、クッキーアンドクリームと答えた。一口ちょうだい、と美耶子が言うと、特別だぞ、と椿は答えた。
春風が吹いて、ざぁ、というピンクノイズが二人の鼓膜を震わせる。髪の乱れを気にして、手を翳そうとする二人の手が触れる。笑って、風を躱して、ホームの階段を下りていく。駅前に広がるロータリーの広場にアイスクリームショップが見えた。
柔い陽炎の中を歩き、アイスクリームショップの自動ドアが開く。ほんの少し冷たい空調に足を踏み入れて、注文を確認しあう。
四年目に芽吹いた二人の恋色に、時間は限りなく続いていた。
(了)
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