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桜が散り始める入学式。朝霧美耶子と椿涼太は高校のクラス分けに驚いたところから始まった。
「え、嘘でしょ。また椿くんと一緒なの?」
「俺も思ったんだけど。四年連続なんてある?」
入学式の前にクラス分けされた教室の中は、幼稚園、小学校、中学校と知った面子で軽口を叩きあっていた。小学校一緒だったよねー、とか、お前ほかの高校受かったのになんでこの高校来てんのー?とか。しかし、和気あいあいとしたムードの中で二人は気恥ずかしさを感じていた。
中学校三年間、二人はクラスが一緒だった。その上、高校のクラスまで一緒。同じ中学から来た生徒は、二人とはあまり面識のない、橘という女子だけだった。橘は他のクラスである。職員室でどんな話し合いが行われていたか二人の知る由もないが、決まったことは決まったことだ。二人は中学校で、一緒の高校に行く約束すらしていない。なのに、受験、合格、入学式でクラスが一緒と、事実だけが重なっていく。
「私、帰宅部でバイトするけど、椿くん何か部活入るの?」
「俺も帰宅部。高校入ったらバイトしようと思ってた。朝霧、なんのバイトしたいの?」
「ファミレス。椿くんは?」
「コンビニかな」
話している内に、担任の教師が来て、体育館まで向かうことになる。桜の花びらは、校内の敷地に桃色の絨毯を敷きつめていた。窓の外は晴天である。揃えられたような風景に、新入生は溶け込んでいた。
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