プロローグ

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プロローグ

それは、突然の事だった。 あぁ、本当に突然だ。 いつものように、家族で夕飯を食べたあと、 何気なくテレビを見ていただけだった。 テレビ番組の間に流れるCMを ただ作業のようにぼーっと眺めていた。 「あき!あんた志望高校決めた!?」 夕飯を食べたっきり、部屋に戻っていた姉が 大声で叫んでリビングのドアをあけた。 「は?いや、まだだけど、目星はつけー」 言いかけたところで、姉がぐわし!と俺の両肩を掴む。 女の癖に酷い力だ。 「あんたに、ここに行って欲しいの!! 全寮制だし!母さんもいいと思わない?」 姉に押し付けられたスマホの画面には、 少し離れたところにある、全寮制男子校。 また何か、BL本の影響を受けたのだろうか。 「お母さんは、あんたの好きなとこ行くのがいいと思うけどね。」 そう言った母さんは、特に止めることも無く 「どうよ?お願い!姉ちゃんの為と思ってさ! それに、あんたの頭だったら特待生もいけると思うのよ!」 姉がその言葉を口にした瞬間母さんの目の色が変わった。 「特待生にはどんな特典があるのよ?」 ここぞとばかりに姉が目を爛々と輝かせる。 「もちろんぬかりなく調べてるって! 授業料免除と学食タダなんだって! 払うのは寮費と施設費のみってさ!!」 その言葉に母さんはこちらを見た。 「晶が、お金の心配してくれたら嬉しいなー なんて」 えへっと効果音が付きそうな顔で母さんが苦笑いする。 アラフォーの母さんにはきつい。 「まぁ、お金のことは俺も心配してたし、 とりあえずそこの模擬試験受けてみるよ。」 当時の俺が、そんな上手い口車に載せられて 痛い目に遭うとは思ってもなかった。 どんだけ後悔しても、それは過去の話。
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