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「澤さんは、いますか!?」
突然イルカプールに怒鳴り込んで来た末緒に、トレーナーたちは驚いた。
愛らしい新人の彼は、社内でも有名だ。
それが、いつもの笑顔を捨てて、怒りをあらわに突進して来たのだ。
スタッフはみんな、その剣幕に圧されて一方向を指さした。
そして、その先には蒼真の姿がある。
末緒は礼も言わずに、彼の方へと大股で進んだ。
蒼真は、イルカ専属の獣医師・宮原と共に、ハンドウイルカのミコを診ていた。
「今朝から、餌の吐き戻しがやけに多いんです」
「最悪、異物を飲み込んだ可能性がありますね」
そんな深刻な会話に、末緒は強引に割って入った。
「澤さん! イルカショーの時間を短くするなら、運営課に連絡ください!」
しゃがんでいた蒼真と宮原は、その声の勢いにつられて立ち上がった。
見るとそこには、激おこの新入社員がプンプンしている。
宮原が何か言いかけたが、蒼真の方が速かった。
「今、それどころじゃないんだ」
「それどころじゃない、って!?」
末緒の怒りは、頂点に達した。
「お客様から、クレームがあったんです! その矢面に立つのは、いつも僕たち運営課の人間なんですよ!」
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