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「おっ!美味そうな匂いだな。」
ダンナの声が聞こえた。
お鍋のフタをとると、白い湯気がホワッとあがり、美味しそうな匂いがキッチンに広がった。
今日はダンナの好物のクリームシチューだ。誕生日なので久しぶりに作ってあげた。
「もーすぐ出来あがりだよ。」
テーブルの上には、柄にもなくお花を飾ってあげた。乾杯用のビールグラスも準備万端だ。
「よし、できた。」
2枚並べたお皿にクリームシチューを盛り付けテーブルに並べた。
椅子に座って、ビールグラスにビールを注ぐ。もちろんダンナの分からね!
「じゃあ、お誕生日おめでとう!かんぱーい!」
ビールを一口飲んでから、シチューを恐る恐る口へと運ぶ。
3年ぶりのクリームシチューの味だ。
この3年間、クリームシチューが食べれなかった。ダンナが大好きだったクリームシチュー。
3年前のダンナの誕生日に作ってあげたクリームシチュー。会社からの帰りに事故にあい食べる事なく帰らぬ人となってしまった。それ以来、クリームシチューを作ることさえ出来ずにいた。
今日一日、アルバムを見ていたらダンナが美味しそうにクリームシチューを食べている写真を見つけた。ほんとにクリームシチューが好きだった。
その写真を見ていたら何となく作ってみたくなったのだ。
「ねぇ、見て。美味しそうでしょ?」
ダンナの写真に向かって聞いてみた。
「あー、腹減ったなぁー。」
そんなダンナの声が聞こえた気がした。
─完─
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