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蒼真と同じ水族館に入社した末緒は、運営課に配属された。
男性にしては小柄だったため、あまり力仕事の発生しない部署に割り当てられたのだ。
蒼真と違い、末緒はとにかく笑顔の素敵な人間だった。
電子化された今の時代には珍しく、入館チケットを自動発券機ではなく、スタッフの手でお客様に渡す。
その発券カウンターに、末緒は座った。
時には、カスハラまがいの要求をしてくる客もいる。
それでも末緒は、その笑顔と機転で、巧く業務をこなしていた。
そんな末緒が、たった一度だけ激怒したことがある。
ただ、相手はお客様ではなく、蒼真に対してだ。
話は、3年前に遡る。
蒼真が30歳、末緒が23歳の時だった。
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