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「落ち着いてきた?」
優しい声音で尋ねる由希奈さんに、消えそうな声で、「はい」とだけ答える。
「言いたくなかったら全然大丈夫なんだけど、何かあった?」
何と答えるか迷ったが、あそこまでの醜態をさらした相手に何も言わないというのもおかしな話だと思い、私は思いのたけをすべて打ち明けることにした。
もっとも、よくも知らない私の誕生日を祝い、泣き崩れた私を抱き寄せ、寄り添ってくれた由希奈さんなら受けとめてくれるような気がしたのだった。
消え入りそうな声で、学校での出来事、由希奈さんを怖がっていたことなどを洗いざらい話した。
支離滅裂な私の話を由希奈さんは、うんうんと遮ることなく聞いてくれるのだった。
「ごめんね、私初めて琴子ちゃんに会ったあの日、琴子ちゃんが暗い顔してたから。
いきなりこれから家族ですって言われたら戸惑うし、そんな相手が馴れ馴れしくペラペラ話しかけたら気に障るよなって思って。
ぐるぐる考えたらあんな感じになっちゃって。でもあとになって、もっとああすればよかったってめちゃめちゃ後悔した。やっぱり態度悪かったよね。本当にごめん。
本当はね、ちゃんと仲良くなりたかったんだ。だからこんな風にお誕生日もお祝いしようって意気込んでたの。空回りして傷つけちゃったよね、ごめん。」
てっきり由希奈さんは私に興味がないと思っていたので、初対面時の私の顔色など窺ってくれて、考えてくれていたなんて思わなくて、驚きだった。
それに先に暗い顔で悪態をついたのは私だったのだと知り、勝手に由希奈さんを冷たい人だと決めつけて悩んだ自分が恥ずかしくなった。
「それと、これは私の話なんだけど。私の小中学校も田舎で、一クラスしかなくて、ずっと世界が狭くて苦しかった。
学校しかり、その地域コミュニティがすごく生きづらくて。学校に行きたい、なんて思ったこと一度もなかった。」
由希奈さんが自分と同じようにいろいろと考えて、悩んでいたと知らなくて拍子抜けする。この人もしかして―――
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