2人が本棚に入れています
本棚に追加
「琴子ちゃんさ、朝わざと、ぎりぎりに登校してたりする?」
思わぬところで図星を突かれて驚く。そんな私の表情を確認して、由希奈さんは言葉を続ける。
「私もそれしてたなって思って。朝のホームルーム前の時間って何気に地獄だよね。なんかこう、絶対友達とおしゃべりしてなきゃって思っちゃう。
それにさ、教室に着いて鞄の荷物を自分の席に入れる時間があるじゃない。そこで、嫌なイベントがあってさ。」
「私はAちゃんとBちゃんと3人グループだったの。それで、私とAちゃんは家が近くて一緒に登校してたんだけど、朝のそのかばんを置くタイミングで、先に学校に着いたBちゃんは毎日私じゃなくてAちゃんの机に行ってたんだ。
二人はなんとも思ってなかったのかもだけど、私は毎日チクチク傷ついてた。」
「だから、登校時間わざと遅くしてた。別にその子たちのことが嫌いだったとかではないんだけど。
これを二人に話したとしても、きっと、そんな細かいこと気にしてたのって笑われるんだろうなって。」
彼女の体験談を私も何度も体験した。そのことに悩む自分が嫌で、私も登校時間そのものを遅らせたのだ。
あまりにも、今の自分と同じ状況で、同じ気持ちで、驚くと同時にうれしくなった。
この人もしかして―――私とすごく似てる…?
「私にとってはもう過去のことだけど、琴子ちゃんにとってはまだ現実に起こってて。
些細な事っていう人もいるかもだけど、琴子ちゃんにとっては今世紀最大の悩みだったよね。つらかったね。」
その言葉にまた涙があふれそうになり、必死にこらえる。そんな私を気遣ってか、さらに由希奈さんは言葉を続ける。
最初のコメントを投稿しよう!