出会い

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長い付き合いだからこそ、人間関係は固定化し、30人という小さな集団の中でのスクールカーストは変動することがない。 だから、私は今ある自分の居場所を死守しなければならないのだ。 「おはよう」 教室の出入り口付近でたむろする、“仲良しの”友達4人に挨拶する。 いちばんに話しかけてくれたのは唯だった。 「琴子、今日もぎりぎりじゃん。あたしとララと一緒に登校してた時はもっと早く来れてたのに。」 唯の軽いノリに私も温度感を合わせて返答する。 「いや、朝起きるのきつくて、唯たちと同じ時間に出るのは無理だ。ぎりぎりまで寝るわ。」 以前までの私は、家が近い唯とララと一緒に登校していたが、いろいろと嫌なことが重なった結果私はひとりで登校することにした。 きっと唯たちは、私が登校時間をわざとずらしているなんて考えもしないんだろうな―― そんなことを考えていると、ほどなくして担任が教室に入ってきて、朝のホームルームが始まるのだった。 女子特有のグループ文化。もちろんそれは片田舎のこの教室にも精通しているもので、かくいう私も、5人グループのひとりとして、この教室(せかい)に所属していた。 しかし、奇数人数のグループの行く先は前途多難である。学校の廊下や通学路を、三人以上が横一列で闊歩するというのは迷惑極まりない。 そのため、5人は2-2-1という隊列を組む。しかし、悲しいかなこの寂しい1は“なんとなく”で決まってしまうのだ。そして、その寂しい1は毎回ではないが、たいてい私である。 というのも、誰かに寂しい1の役回りを押し付けると分かっていて、2の中に入り込むのは気が引けるし、そもそもみんなきっとこんなこと気にもしていない。 いちど「いつも私ばかり1なんだけど」とおどけて言ってみたところ、 「ごめんごめん~」 と茶化されてその場が終わった。 数日は事態が改善したが、日が経つにつれていつものように、1の役回りは私に回って来た。 そのくらい、私以外の人間にとっては、取るに足らない出来事なのだ。まあ、そもそも彼女たちの中で私の優先順位が低いだけとも思えるが。 けれど、もうそのことについての抗議をすることはできない、勇気もない。 8年来の友達と言えど、この程度の関係なのだ。
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