1分ショート・ビンゴで当たった彼女

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「リーチ!」 端っこの席にいた男性が立ち上がる。 ハヤトは焦っていた。ネットで募集されたビンゴ大会に参加していた。300人いる会場で数字が読み上げられる。ハヤトはいちばん早くリーチになっていた。しかし、これでリーチは3人目だ。 ビンゴ大会の1位の賞品はシークレットにされていたものの、豪華なのは間違いなかった。なにせ参加費が10万円なのだ。それだけの価値があるとだれもが信じていた。 「52番!」 あぁ、とため息が会場を包む。だれも該当しなかったようだ。今度こそ…。祈るように目をつぶる。 「56番!」 やった、ハヤトの待っていた数字だった。 「ビ、ビンゴ!!」 興奮していた。 「ビンゴの方、前に出てきてください〜!」  司会の蝶ネクタイが、うながしてくれた。 ハヤトは羨望の眼差しを感じながら、前に向かう。 「1位の賞品は、彼女です」 袖から1人の女性があらわれた。目鼻立ちが整っていて、赤いドレスからすらっとした脚が見えた。 「え?」 会場がザワつく。 その日からハヤトに彼女ができた。 彼女を家に持ち帰ったが、まったくハヤトの好きなタイプではなかった。 鼻は高くて彫刻のよう。美人ではある。モデル体型。ハヤトはぽっちゃりしていて丸い顔の女の子が好きだった。 だが毎日過ごしているうちに、ハヤトは彼女の良さが見えてきた。仕事で悩んだときは聞いてくれる、彼女が困ったときは頼ってくれる。ハヤトの作った料理もおいしく食べてくれる。喧嘩することもあった。だけどとにかく話し合うことを優先して、お互い仲直りをしようとした。 そしてハヤトは彼女と結婚した。 子どもは女の子が2人、産まれた。 すくすくと育ち、巣立っていった。 ハヤトは彼女といっしょに年を取り、老後を過ごした。幸せな人生だった。心の底から思えた。 理想の彼女を追い求めることなんて必要ない。きっと相手をしっかり見れば、幸せは訪れるものなんだ。 そう、人生はビンゴのようにランダムなくらいがちょうどいい。
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