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「はぁ。もう朝か。馬の準備しに行くか」
ラウルはそのままベットから立ち上がりカーテンを開けて大きく伸びをする。
(ふあぁ。これが1番健康を感じる瞬間!
本当は今日転移魔法で砂漠まで行きたいけど、飛べる距離には限界がある。魔法も万能じゃないんだよなぁ。馬乗るのお尻痛いし)
♦︎
厩舎に行くとすでに馬の準備をしているスペンサーがいた。
「スペンサーおはよう」
「おはようございます。あのラウルさん、今回の砂漠の件って本当にあなたがわざわざ行くまでのことなんですか?普段調査なんて騎士団が行くでしょ。なんで今回の件だけ宮廷魔法師に流れ込んできたのか不思議なんですけど」
スペンサーの話は確かにそうだった。普段魔物が出現したとなるとまず騎士団が調査に向かい、そして騎士団だけで対応できないと判断すると宮廷魔法師が援軍として向かう。
なぜ宮廷魔法師が最初に調査に向かわないかというと、20人しかいないからだ。宮廷魔法師になるためには、国立の魔法学校を5位以内に卒業し、さらには難関試験に合格しないとなることができない。
(圧倒的に人手不足なんだよな。肩書きとかいいから、とりあえず人手を増やしてくれ)
「それはそうなんだが、魔法師団長直々に頼まれたんだ。今回だけは特例らしい。1週間子供達に魔法を教えることができないのは残念だが、久しぶりの遠征とでも思って頑張るよ。スペンサーはなんでそんな浮かない顔をしているんだ?」
「なにか怪しくないですか?」
「なにがだ?」
「だって最初魔法師団長にラウルさん1人だけで調査に行けって命令されたんでしょ?流石にラウルさんが強いからって言って1人だけで任務任せますか?
魔物の大量発生っていうならもっと人員必要でしょ!」
「でも、結局アベラルド皇子に頼んだらスペンサーと兵士一部隊も連れて行けることになったからほんとによかったよ。もし、何かあったら俺がみんなを守るからなにも心配しなくていい。」
「俺はっ!!!あなたの心配をしているんです!もしあなたに何かあったら俺どうすればいいんですか・・・・・・」
俯いたまま硬く握りしめていたスペンサーの手をラウルはそっと取り言った。
「スペンサー大丈夫だよ。俺のために心配してくれてありがとう。きっと皆んな俺のことを期待してくれているだけだ。この調査終わったらご飯行こうな」
「どうせ行かないくせに」
「行くよ!可愛い後輩のためだぞ。あとスペンサー本当は俺って言うんだな」
(新たな後輩の発見に俺は笑う。こんなにも可愛い後輩をもてて俺は恵まれてるな。)
「ラウルさんって笑うんですね」
「俺をなんだと思ってるんだ?
ん?もしかしてスペンサー熱あるのか?顔赤いぞ。あと少し出発まで時間あるから休んどきな」
「大丈夫です。出発前で興奮してただけですから」
「それならいいんだが」
そう言ってスペンサーはラウルの前を後にした。
(きっと今回の調査も無事に終わる。この心の中にある不安はきっと緊張だ。大丈夫。きっと大丈夫だ。)
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