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(あ、そういえば南部の砂漠地域の問題まだアベラルドに伝えられていなかったな。いつもより早めに仕事も終わったし、そのことだけ伝えに行くか。よし!そうと決まれば早く伝えて帰ろう)
「ラウルさん、もう仕事終わり?今からご飯どうですか?」
そう声をかけたのは、同じ宮廷魔法師の後輩スペンサーだった。彼はラウルの2個下の後輩ですごくラウルに懐いていた。
(でも、俺以外の同僚や上司と仲良く話しているのを見たことないんだよな。人見知りなのか?)
「悪い。今から皇子のとこにいって砂漠地域の問題だけ伝えてくる。また今度行こう。」
「はあ。ラウルさん全然僕とご飯行ってくれないですよね。いっつも皇子、皇子ってそんなにあの人がいいんですか?」
「いやいや、仕事の話しに行くだけだって。お前も俺だけに誘うんじゃなくて女の子でも誘ったらどうだ?そんなにかっこいいんだから」
「僕かっこいいですか?」
(素直にかっこいいっていうのはなんか癪だな。確かにスペンサーは綺麗な水色の髪をしていて身長も俺より10センチくらい高い。細身ではあるが、筋肉もしっかりついているし、何より口元のほくろが腹立つ。女の子はこういうちょっと影のある男が好きなんだよな。俺も口元にホクロ描こうかな。)
「はいはい。またご飯いこうな」
「ちょっと!早くかっこいいって言ってくださいよ!もう、逃げないで!!」
言ったら言ったでめんどくさいと思ったラウルは、城の近くまで転移魔法を使った。
♦︎
ラウルが今日の酒のつまみになにを食べるか考えて歩いていると、もうアベラルドの執務室の前だった。
ドアの前に立ち、2回軽くノックする。
「アベラルド皇子。ラウルです。南部の砂漠問題について報告しに参りました。」
「入れ」
(うわ。今日ちょっと声だけで機嫌悪いの分かる。今日寄るの間違えたかも。家まで転移魔法使いたい!ほんとに帰りたい!)
ドアをそっと開けて入ると、アベラルドが机の書類にずっと目を向けていた。
(いつもは、俺が入ってくると必ず視線を向けるのにどうしたんだろう。)
「アベラルド。何かあったのか?」
「なんでそう思う」
「うーん、なんとなく?もう付き合いも長いし・・・・・・・・親友だし。」
すると急にアベラルドが目を細めて高笑いをし始めた。
「俺はまだその枠なのか。まぁそうだよな。お前はそういう奴だった。」
「おい!どうしたんだよ。何かあるなら言えよ!」
「いいや。なんでもない。それで報告は?」
「なんでもないならいいけど・・・最近砂漠で大量の魔物が出現し始めている。何のきっかけで魔物が多く出現しているのかはわからないが、俺も原因を調べるために砂漠に1週間向かおうと思う。流石に俺1人じゃ現地の人の救援は難しいから何人かの宮廷魔法師と兵士を連れて行ってもいいか?」
「あぁ。大丈夫だ。」
「アベラルド本当にお前どうしたんだ?もしかして噂聞いたのか?」
「噂?なんのだ」
「ええと。俺たちが・・・・その・・・・」
「早く言え」
「だから!俺たちがそういう関係って!」
「そういう関係とは?」
「それは・・・・・その、恋人とか?」
「なるほど。恋人か。どうせ城に使えている誰かが夜俺の私室に入るお前を見て流した噂だろう。それで、それを聞いたお前はどうおもった?」
「え・・・・そんなのあり得ないだろ。俺もお前も男だぞ」
「そうだよな。あり得ないよな。でも、お前多くの男から狙われてるって知っているか?そうだな。例えば水色の髪の後輩とか」
「は?そんなわけないだろ。いくらアベラルドでもそんな冗談信じないぞ。」
「まあいい。砂漠の件は頼んだ」
(今日のアベラルド機嫌が悪いし、さっさと退散するか。)
「あぁ。じゃあ俺行くぞ。何かあったらいつでも言えよ」
そのままラウルは後ろを振り向かずに執務室を出た。
(やっぱり引き戻そうかな。でも、機嫌が悪いときに人と話をするのは俺も嫌だからな。やめとこ)
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