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笑顔
「なんで来たの」
私は振り返らず彼女に尋ねた。
「アンタわかり易すぎんのよ」
そう言って彼女は笑うが、殺人現場を目撃しといて笑っていると考えると背筋が凍る。
「どうせ、昭輝ちゃん。私の事警察に言うんでしょ。」
「協力したら捕まるっていうよねー。ねえ、なんで袋を黒く塗ったと思う?」
そう笑顔で私に聞く。「そんなクイズしてる暇無い」と思ったが考えてみると、わからない。
「それ買った場所分かったらアンタが犯人だって見つかった時わかんだよ。」
とても中学生、いや高校生とは思えなかった。
増してやこの時。今。そんなすぐに頭を回転させられるなんて。
昭輝ちゃんは昔から地頭が良かった。頭の回転が人一倍早いのだ。
「昭輝ちゃん、頭良いね」
「まあね!穂波、おばあちゃんが心配する前に死体隠しに行かないと。」
「ねえ」
私は昭輝ちゃんが怖かった。
「どうして私を止めなかったの?何がそんなにおかしいの?」
昭輝ちゃんが「え?」というような顔をした。
「どうしてって...親友だからよ?親友ってそんなもんでしょ。」
犯罪は訳が違う。増してや殺人だ。たしかに彼女は莉愛に触れてはいないが、止めないだけで立派な犯罪だ。
昭輝ちゃんは昔からどこかズレていた。ズレていたのか??、いやわからない。
昭輝ちゃんからしたら私たちの方がおかしいのかもしれない。
昭輝ちゃんがおんぶする莉愛の背中を眺めていた。
「穂波?来ないの?」
「あ、行く。」
人を殺してしまった。今後への不安が大きく、心が重たいと言うのに、昭輝ちゃんはそれに反して晴れのお花畑のようだった。
満足げの顔と、軽い足並み。
「大丈夫よ。アンタのこと裏切んないから。」
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