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 ――(わたくし)のこの身はすべて貴方様のものなのです。  幼き時分に、そう忠誠を誓ってから、どれほどの時が流れたろう。声変わりもしていなかった自分はまだ父の足元にも及ばなかったと記憶している。  それでもウェールは代々続く騎士の家系で、生まれたときから姫を衞ることは決定づけられていたし、その才にも恵まれていた。  現在、祖国を離れて二週間ほど経った朝、ひたすら東へ向かう旅のさなか、ウェールは宙を舞っている。  両の脚から空を蹴った魔力の光跡がたなびく。  翼幅五メートルを優に超す怪鳥に空中戦を仕掛けている。高度から自分を狙う怪鳥に向け腹をさらすように空に寝そべる姿勢で、攻撃を誘うウェールの手には代々受け継いできた剣が握られている。  怪鳥は常人の皮膚など薄衣同然に容易に引き裂く凶器めいた爪が備わった足をすぼめて、翼を畳む。急降下の姿勢を取る。  剣の柄を握り直そうとした刹那、外部からの力により剣が手を離れた。目をやった視界の端へ怪鳥の子分らしき人の頭部ほどの大きさの翼影が剣を携え消えていく。  二頭ひと組で狩りを行うのか、と感心する間もなく――衝撃。  ウェールの腹部に食らいつき引き裂こうとする爪はしかし動かない。魔力の防御は堅牢だ。  剣を奪われた空手から拳を握る。込めた魔力が朝の清明な空気に燐光を散らす。  殴った。  腿の辺りから入った衝撃は魔力の熱とともに右の翼を根もとから爆ぜさせるに至る。  同時、剣に込めていた魔力も炸裂する。子分はその矮躯のすべてを魔力に焼かれて落ちていく。  ウェールは地面に叩きつけられたが土煙のなかのっそりと起き上がる。怪鳥の死骸が、遅れて捥げた右翼が地面に重量感のある水音を立てて落ちた。  朝食にするには食いでがありそうだった。  
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