第一章 同期と勢いで結婚しました

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じっと彼を見て、頷く。 これは別に、やけになったわけではない。 それが最善だとジャッジを下しただけだ。 「よし!」 右の口端をつり上げて笑う矢崎くんはなんだか企んでいそうで、早くも後悔しそうになった。 居酒屋を出てその足で役所へ行き、婚姻届を提出した。 こんな考えなしな行動ができるなんて、酔った勢いって恐ろしい。 「結婚したんだから今日はもちろん、俺んちに泊まるよな?」 「そうだねー」 もうその気なのか、矢崎くんはタクシーを捕まえて私を押し込んだ。 「そういえば矢崎くんちって初めていくな」 入社以来の付き合いで、私の家には何度も送ってもらっている。 しかし一度だって、彼の家に行ったことはなかった。 よく考えたら、どこに住んでいるのかすら聞いたことがない。 「そうだっけ?」 彼はすっとぼけているが、なんか誤魔化された気がするのは気のせいだろうか。 タクシーは立派な高層ビルの下で止まった。 まさか、ここに住んでいるなんてはずはない。 「えっと……」 「急な泊まりだからなにも準備してないだろ?」
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