第一章 同期と勢いで結婚しました

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「いいって言ってんだろ」 私たちの言いあいを気にとめることなく、店員は商品のバーコードを通していく。 「だか、ら……!」 〝それ〟のバーコードが通され、液晶に商品名が表示されたのを見た途端、固まった。 え、これってこんなに堂々と買うもんなんですか? などと思っているのは、私が未経験だからなんだろうか。 いや、でも、男女ふたりで一緒に買うなんて、いかにも〝今からヤります!〟って感じじゃない? でも、矢崎くんも普通だし、店員さんも平然としているし、これが当たり前なのかな……? 私が動揺してフリーズしているあいだに、矢崎くんは支払いを済ませ、レジ袋にものを詰めてもらって持った。 「ほら、いくぞ」 「えっ、あっ、……そう、だね」 声をかけられて我に返る。 そうか、夫婦になったんだから、そういうことをするのか。 右手に鞄と荷物を持ち、左手で私の手を引いて矢崎くんは歩いていく。 どんな顔をしていいのかわからなくて、ただ俯いて歩いた。 彼はビルの中を進んでいき、エレベータの前で足を止めた。 「えっと……」 「俺んち、この上なの」
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