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「……ハイ?」
理解が追いつかず、首が斜めに倒れる。
この上とは、このビルに住んでいるってことですか……?
「えっ、あっ!?
いやいやいやいや」
「なにがいやいやなんだよ」
エレベータに乗り、私の態度に彼は不満そうだが、仕方ない。
いくらうちがそれなりの大企業でも、二十代の若き課長が都心の一等地に建つタワマンに住めるほど、給料を出しているわけではない。
……せめて、低層階で。
それならまだ、現実味がある。
しかし、エレベータはぐいぐい上っていき、最上階で止まった。
「ようこそ、我が家へ」
「あっ、えっと。
……お邪魔、します」
矢崎くんはなんでもないように部屋に入れてくれたが、本当にここに住んでいるの?
通されたリビングは、驚くほど広かった。
眼下には地上の光が星のように広がる。
「ねえ」
「なに?」
勧められてアイボリーのソファーに座る。
革張りのそれは、座り心地が最高だった。
「家賃、どうしてるの?」
不躾ながらつい、聞いてしまう。
「んー、投資とかそんなので稼いでる」
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