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さらっと言い、スプーンとコップを手に矢崎くんは隣に座った。
のはいいが、怪しい。
怪しすぎる。
いまさらながら、私は会社での彼しか知らないのだと気づいた。
「なんか疑ってるな?」
「えっ、あー、ね?」
顔をのぞき込まれ、曖昧に笑って目を逸らす。
はい、そうですなんて言えるわけがない。
「まあ、そりゃそうだよな。
ただの同期がこんな立派なマンションに住んでたら、俺だっていろいろ勘ぐる」
皮肉るように笑い、矢崎くんは買ってきたアイスを開けた。
溶けるのはもったいないので、私もそれを合図に開ける。
「実は、会長が俺の祖父で、俺は次期跡取りなんだ」
「……ハイ?」
驚きの事実を聞かされているのは理解しているが、衝撃が大きすぎて情報が処理できない。
私は無の表情で首を傾げていた。
おかげで、掬ったアイスが膝の上に落ちる。
「おい、落ちてるぞ!」
「えっ、あっ、うん」
大慌てで矢崎くんがティッシュで、汚れた服を拭いてくれる。
それを別の世界の出来事のように見ていた。
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