第一章 同期と勢いで結婚しました

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さらっと言い、スプーンとコップを手に矢崎くんは隣に座った。 のはいいが、怪しい。 怪しすぎる。 いまさらながら、私は会社での彼しか知らないのだと気づいた。 「なんか疑ってるな?」 「えっ、あー、ね?」 顔をのぞき込まれ、曖昧に笑って目を逸らす。 はい、そうですなんて言えるわけがない。 「まあ、そりゃそうだよな。 ただの同期がこんな立派なマンションに住んでたら、俺だっていろいろ勘ぐる」 皮肉るように笑い、矢崎くんは買ってきたアイスを開けた。 溶けるのはもったいないので、私もそれを合図に開ける。 「実は、会長が俺の祖父で、俺は次期跡取りなんだ」 「……ハイ?」 驚きの事実を聞かされているのは理解しているが、衝撃が大きすぎて情報が処理できない。 私は無の表情で首を傾げていた。 おかげで、掬ったアイスが膝の上に落ちる。 「おい、落ちてるぞ!」 「えっ、あっ、うん」 大慌てで矢崎くんがティッシュで、汚れた服を拭いてくれる。 それを別の世界の出来事のように見ていた。
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