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「祖父ちゃんもどうにかしたい気持ちはあるみたいなんだが、なにせ年取ってからできたひとり息子だ。
つい甘やかしてしまうらしい。
だからといって許されるわけじゃないが」
困ったように彼が笑う。
これで少し、謎が解けた。
鏑木社長はオレは会長のひとり息子だ、ゆくゆくはこの会社はオレのモノだ、なんて威張っているが、実際はすぐにでも辞めさせたいが会長の子供可愛さで、当たり障りのない子会社の社長をやらせてもらっているのだ。
「アイツと親戚になるのが不安なんだろ?」
眼鏡の下で眉を寄せ、矢崎くんが私をうかがう。
「そ、そうだね」
それに曖昧に笑って答えた。
鏑木社長と親戚になるのが不安なのは事実だ。
ただし、その理由は矢崎くんが思っているのとはちょっと違うが。
「純華はあんな、最低野郎と親戚付き合いなんてしなくていいよ。
てか、俺がさせないし、プライベートでは会わせない。
だから、心配しなくていい」
安心させるように彼がにかっと笑う。
「う、うん。
ありがとう」
彼の気持ちは嬉しかったが、私はなおいっそう不安になっていった。
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