第一章 同期と勢いで結婚しました

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「祖父ちゃんもどうにかしたい気持ちはあるみたいなんだが、なにせ年取ってからできたひとり息子だ。 つい甘やかしてしまうらしい。 だからといって許されるわけじゃないが」 困ったように彼が笑う。 これで少し、謎が解けた。 鏑木社長はオレは会長のひとり息子だ、ゆくゆくはこの会社はオレのモノだ、なんて威張っているが、実際はすぐにでも辞めさせたいが会長の子供可愛さで、当たり障りのない子会社の社長をやらせてもらっているのだ。 「アイツと親戚になるのが不安なんだろ?」 眼鏡の下で眉を寄せ、矢崎くんが私をうかがう。 「そ、そうだね」 それに曖昧に笑って答えた。 鏑木社長と親戚になるのが不安なのは事実だ。 ただし、その理由は矢崎くんが思っているのとはちょっと違うが。 「純華はあんな、最低野郎と親戚付き合いなんてしなくていいよ。 てか、俺がさせないし、プライベートでは会わせない。 だから、心配しなくていい」 安心させるように彼がにかっと笑う。 「う、うん。 ありがとう」 彼の気持ちは嬉しかったが、私はなおいっそう不安になっていった。
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