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アイスも食べ終わり、矢崎くんは私を先にお風呂に入らせてくれた。
「矢崎くんが会長の孫……」
酔いもすっかり醒め、ここに来たときの高揚感はすでにない。
それよりも彼と勢いで結婚してしまった後悔が押し寄せていた。
「どーしよう……」
鏑木社長は私の家族を離散に追い込んだ人物だ。
なぜそんな人間の一族の経営する会社に入ったのかって、弱みを握って潰してやるつもりだったのだ。
しかし会社自体はホワイトで、居心地がよくて弱みを握るどころか発展に貢献しているくらいだ。
どうも、人でなしは鏑木親子くらいらしく、グループ内でもガン扱いされていた。
しかし矢崎くんはそんな人間の甥なのだ。
彼はアイツとは違うし、彼自身アイツを毛嫌いしているみたいなのはよかったが、それでも感情では割り切れない。
「ああーっ……」
ずるずると浴槽に沈んでいく。
なんで私は矢崎くんと結婚してしまったんだろう?
いくら結婚マウントを取られてくさくさしていたからって、早まりすぎでは?
ほんの一時間ほど前の私を、叱りつけたい自分だ。
「ううーっ……」
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