847人が本棚に入れています
本棚に追加
言い切らないうちに母は被せてきた。
そうだろうと思っていた話だけに、さらに気持ちが沈んでいった。
「いや、結婚……」
『あの由美ちゃんだって結婚したのよ?
純華だって頑張れば結婚できるって!
だからほら、お見合いしましょう?』
母なりに私を心配してくれているのはわかる。
いとこで私より年下の由美ちゃんはよくいえばぽっちゃりで、お世辞にも美人といえるタイプではなかった。
その彼女が先日、結婚したのだ。
おかげで母は、私の結婚に燃えているのだろう。
「はぁーっ」
私の面倒臭そうなため息など気づかず、母は相手の男性について話している。
高校生から母子家庭で育った私としては母の願いを叶えてやりたいところだが、結婚となるとうんと首を縦には振れなかった。
「お母さん。
土曜日は仕事なの。
ごめんね」
母を傷つけないように、遠回しで見合いを断る。
それに、土曜が仕事なのは事実だ。
『仕事仕事ってあんたはそればっかり。
そんなんだから男が寄りつかないのよ』
再び、私の口からため息が落ちていく。
最初のコメントを投稿しよう!