第一章 同期と勢いで結婚しました

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「離婚、しよう?」 矢崎くんからの返事はない。 沈黙に耐えかねてなにか言おうとしたら、ようやく彼が口を開いた。 「それは、俺が鏑木社長の甥だからか」 今度は私が黙る番だった。 その理由は当たっているが、はい、そうですと素直には答えられない。 「俺だってアイツの甥だなんて嫌だ。 でも、こればっかりはどうしようもないんだ。 それを理由に離婚なんて切り出されても困る」 苦しそうに矢崎くんの顔が歪み、私も息が詰まる。 私だって彼が、アイツとは違う、誠実で優しい人だって知っている。 でも、わかっていても感情では受け入れられないのだ。 「……ごめん」 沈黙。 「でも、私と離婚して」 「嫌だ」 起き上がった彼が、私を押さえつける。 彼の目には静かな焔が燃えていた。 「俺はずっと、純華と結婚したいと思っていた。 やっとその願いが叶ったんだ。 手放すわけがないだろ」 傾きながら近づいてくる顔を、ただじっと見ていた。 あの、形のいい唇が私の唇に重なり、離れていく。
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