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ママさん社員の仕事のフォローをしている私は実質、ふたり分の仕事を抱えている状態だ。
平日だけで片付かない仕事は土日にやるしかない。
「……まだ改善しないんだな」
眼鏡の下で深刻そうに矢崎くんの眉が寄る。
「そうだね」
それになんでもないように答え、鮭を解す。
上司には現状を訴えたものの、しばらくの辛抱だからと取り合ってくれない。
人員補充で入ってきた社員が三日で辞め、人手不足なのもわかる。
なら、私がやるしかないのだ。
「そうやって頑張るとこ、純華のいいところだけど悪いところだぞ」
行儀悪く矢崎くんが箸の先で私を指す。
それを睨んでいた。
「わかってるよ」
回せる仕事はできるだけまわりに振っている。
それでも、どうにもならないのだから仕方ない。
「新居も探さなきゃだし、指環も買いに行きたいけど、当面は無理かなー」
はぁーっと諦めるようなため息が矢崎くんの口から落ちる。
「あのさ」
「なに?」
「離婚……」
「しない」
全部言い切らないうちに、被せるように彼は拒否してきた。
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