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「お待たせ」
「いや、いい」
一緒に裏口から会社を出る。
部署に残っている人間はもういなかった。
「夕食、どうする?」
「あー、そうだね……」
今度こそ、離婚の話をしなければならない。
「あそこの居酒屋、行こうか」
たまに行く、個室の居酒屋を提案する。
「いいよ」
矢崎くんも承知してくれてほっとした。
お店に入り、矢崎くんはハイボール、私はウーロン茶を注文した。
「飲まないのか?」
「あー、うん」
曖昧に笑って言葉を濁す。
酔って昨日みたいに勢いで変な決断をしては困る。
「こんなに残業して、規定は大丈夫なのか?」
すぐに届いたハイボールを飲みながら、矢崎くんは心配そうだ。
「……はっきり言って、ヤバい」
もうずっと、上司と人事からこの件では注意を受けっぱなしだ。
かといって残業、休日出勤しないように注意するだけで、一向に解決案は考えてくれないが。
「だよなー。
でも俺から口出しできないし……」
はぁーっと苦悩の濃いため息が矢崎くんの口から落ちる。
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