第二章 それまでは夫婦でいさせて

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「大丈夫だ。 問題提起から解決案までセットで提案すれば、将来の経営者テストとして見てくれるからな。 それにうちには目安箱制度もあるだろ。 あれだ」 笑って彼は唐揚げを食べているが、そんなもんなのかな。 ちなみに目安箱制度とは、役員に直、誰でも意見を上げられる制度だ。 江戸時代の制度から通称で目安箱と呼ばれているが、正式名称は別にある。 一階ロビーにコーヒーショップが入ったのも、このシステムに提案があったかららしい。 「じゃあ……。 よろしくお願いします」 改めて正座をし、矢崎くんに頭を下げる。 なにはともあれ、仕事の負担が減れば嬉しいし。 「よせよ。 俺は純華のためだったらなんだってするよ? それにこれは、会社の問題でもあるからな」 重く彼が頷く。 こういう彼の真面目なところは、昔から尊敬していた。 「……で。 りこ……」 「しない」 みなまで言い切らないうちにまた、全力で拒否される。 しかもそっぽを向いて私と目すらあわせないし。 「なんでそこまで、私との結婚に拘るのよ?」 面倒臭いとため息が落ちていく。
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