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もうすでに誰かに公表しているとかならあれだが、現時点で私たちの結婚を知っているのは私たち自身と、処理をした役所の人間しかいない。
なら、書類上の記録は残るが、表面上はなにもなかったことにできるはずだ。
なのにこんなに、矢崎くんが私との結婚に拘るのかわからなかった。
「反対に聞くが、どうして純華はそこまで俺と離婚したいんだ?」
「うっ」
聞かれても私の事情は絶対に話せない。
これは父の意思を尊重して、墓場まで持っていくと母と決めたのだ。
だから矢崎くんが私の旦那様でも、これは話せない。
「……私が将来、矢崎くんの弱みになるからだよ」
かろうじてそれだけを絞り出した。
それにこれは嘘ではない。
もし私の父のことを知れば鏑木社長は私を糾弾するだろうし、会長も矢崎くんの親もいい顔はしないだろう。
それどころか、矢崎くんからも見放される可能性がある。
「母子家庭なのを気にしてるのか?
そんなの、いまどき珍しくないだろ。
それとも父親が女を作って出ていったほうか?」
テーブルに腕を置き、矢崎くんが軽く前のめりになる。
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