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そんな事実はないが、それでも聞いておきたかった。
それに、こちらのほうが重要かもしれない。
「場合による、かな。
なにか事情があって純華が罪を犯したのなら、全力で俺が守る。
悪意だけでやったのなら、俺の全部で純華を更生させる」
強い信念のこもる目が、レンズの向こうから私をいるように見つめている。
ああ、この人は……。
「まあ、純華に限って悪意でなんかするとかないだろうけど」
ふっと唇を緩ませ、彼はグラスを口に運んだ。
「わかった、ありがとう」
歓喜に沸く顔を見られたくなくて、俯いた。
こんな人に愛されて、私は幸せ者だ。
――矢崎くんが、好き。
初めて自覚した、自分の気持ち。
こんな彼なら母も、あの男の親戚でも受け入れてくれるかもしれない。
だから。
「日曜、矢崎くんをお母さんに会わせるよ」
「それって……」
驚いたように目を少し大きく見開いた彼に頷く。
「私はこの結婚、受け入れようと思う。
でも、お母さんに反対されたときは、ごめん」
誠心誠意、矢崎くんに頭を下げる。
私も、母を説得しよう。
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