848人が本棚に入れています
本棚に追加
もしかしたら親子の縁を切ると言われるかもしれない。
そのときは矢崎くんには悪いけれど、母を取る。
私はもう、母をあの男の件で悲しませたくないのだ。
「わかった。
できるだけお母さんに気に入られるように頑張るよ」
力強く頷く彼は頼もしかった。
遅くなったので互いの家に帰ろうと提案したものの。
「じゃあ、俺が純華んちに泊まるー。
俺のお泊まりセット置いてあるから、問題ないだろ?」
悪戯っぽく顔をのぞき込み、もうその気なのか私の手を掴んで矢崎くんはタクシーを拾っている。
「うっ。
そ、そうだ、ね」
そうだった、酔って送ってもらうことが多いから、遅くなったときは泊まれるように置いてあるんだった……。
タクシーで私の住んでいるマンションに向かう。
もちろん矢崎くんちのような高級タワマンではなく、ごく普通の1LDKマンションだ。
入れ替わりでさっさとお風呂を済ませてしまい、布団に入る。
矢崎くんはいつも、リビングに引いた布団だけれど、今日は。
「純華と一緒に寝るー」
最初のコメントを投稿しよう!