第一章 同期と勢いで結婚しました

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母は私だって頑張れば結婚できると言っていたが、地味なうえにつり目で唇も薄く、怖そうな私となんて、誰だって結婚したくないだろう。 通勤電車に揺られて出勤する。 「おはよ」 「お、おは、よう」 最寄り駅を出たところで肩を叩かれ、びくっとした。 すぐになんでもないように、同期の矢崎(やざき)くんが並んで歩く。 私なんてすらりと背の高い彼の、胸までしかない。 当然、それだけ歩幅も違うのだが、彼はいつも私にあわせてくれた。 爽やかに切りそろえられた黒髪を七三分け、涼やかな目もとを黒縁スクエアの眼鏡が引き立てる。 薄いけれど唇は形が整っており、間違いなくイケメンだ。 実際、周囲の女性たちの目を独占していた。 さらに二十代のうちに同期で一番早く課長になり、出世頭なので会社では同期や年下だけではなく、年上の女性たちも狙っているという話だ。 そんな彼と並んで通勤なんて優越感――などまるでなく、私にとって彼はただの友人枠だった。 「相変わらず疲れてんな」 「あー……。 まあ、ね」 曖昧な笑顔を彼に向ける。
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