第一章 同期と勢いで結婚しました

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連日のオーバーワークと今朝は母からの電話で気力を削られ、いつもよりも疲れた顔をしている自覚があった。 「今日はいつもにもまして、クマが酷いぞ」 「うそっ!?」 矢崎くんに顔をのぞき込まれ、足が止まった。 昨晩は温タオルで温めてマッサージし、朝だってコンシーラーで念入りに隠してきたつもりなのに。 「係長になったからって、頑張りすぎ」 「あっ」 私の手を掴み、彼は見えてきたコーヒーショップへと向かっていく。 「コーヒー奢ってやるから、少し肩の力抜け」 「……ありがと」 気づいたときには注文カウンターの前にいた。 ありがたく、カフェラテを注文する。 矢崎くんはこのとっつきにくい私と気さくに接してくれる、貴重な存在だ。 「今、ショッピングモールのオープニングイベントの仕事してるんだっけ」 「そう」 互いに頼んだものを受け取り、店を出てまた歩き出す。 「ま、無理はするなよ」 矢崎くんが慰めるようのぽんぽんと軽く肩を叩いたところで、会社に着いた。 無理はするなと言われても、係長になって初めて任された仕事だ。
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