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タビタとエイプリルフール
その生き物は、家の前にちょこんと佇んでいた。
私が遊びに行こうと家を出た、まさにその玄関口。お母さんが“いってらっしゃーい”とドアを閉めた途端、そいつはぴょこんと道路に飛びだしてきたのである。
サイズはだいだい、小学生四年生の私の手のひらの上に乗るくらい。
緑色のカエルみたいな被り物に、ワンピースみたいなものを着て、背中から六枚羽を生やしている。目が大きくてくりくりとしていて、人間の感覚で言うならばなかなか可愛い顔なのではなかろうか。顔立ち的には、多分女の子。彼女(彼かもしれないけれど)は私を見上げて、こんにちは、と高い声で挨拶してきたのだった。
「こんにちは!自分は、名前をタビタと言います!あなたは、地球の人間さんですか?」
「へ、へ?」
一応周囲を見回すも、周りに私以外に人がいない。私の事?と己の顔を指さすと、タビタと名乗った小人のような存在はこくこくと頷いたのだった。
「もちろんです!タビタはあなたに話しかけています!こんにちは!地球の人の言葉にちゃんと変換できていると思うのですが、もしかしてわかりませんか?」
「あ、いやその……確かに、日本語だけど。え、あなた、宇宙人なの?」
「地球の人ではない、という意味ならば間違ってません。タビタは、地球の外から来た、別の惑星の人間ですので!」
彼女はぴょーんとカエルのように跳ねると、私の肩に乗ってきたのだった。近くに寄ると、彼女はなんだかメロンのような匂いがする。色的にもちょっと美味しそうだった――いや食べないけれども。
「地球の大人の人は、体が大きくて、ちょっと怖いです。あと、なかなかタビタの話を信じてくれません。だから、子供を探していたのです。子供の方が、タビタの話を聞いてくれると思ったので」
「は、はあ」
「あなたは人間の子供ですよね?タビタはあなたにお願いがあるのです」
「な、なんでしょう?」
リュックサックを背負い直して、彼女に問いかける。彼女は薄い胸をえっへん!と張って言ったのだった。
「タビタはとても勉強熱心で、いろんな惑星のいろんな文化を学んでいる最中なのです。だから教えてほしいのです。エイプリルフールがどういうものなのかを!」
「え、えいぷりるふーる?」
なんでそれが出てくるのだろう?と首を傾げた。
確かに今日は、四月一日ではあるけれど。
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